薬剤師が考える健康に大切なこと

高血圧の治療薬⑥ β遮断薬

β遮断薬

血圧は心臓の心拍数(=血液量)と抹消血管抵抗(=血液の流れにくさ)によって決まります。β受容体という部分が刺激されると、心臓からの血液の拍出量が増加して血圧が上昇します。β遮断薬はβ受容体が刺激されないようにして、心臓の心拍数を減らし全身の血管に拍出される血液量を減らして血圧を下げる薬です。

β1受容体とβ2受容体

β受容体には種類があり、β1受容体とβ2受容体があります。β1受容体は心臓に存在して心拍数の調節をします。β2受容体は気管支に存在していてこの受容体が刺激されると気管支は拡張し、遮断されると気管支は収縮します。β2受容体を遮断すると副作用につながるので、高血圧に対して使用するのであれば可能な限りβ1受容体を選択的に遮断する薬が求められます。

内因性交感神経刺激作用(ISA)

また、β遮断薬の中にはβ受容体を完全に遮断する薬と、β受容体を遮断しながらも少しだけ刺激する作用をもつ薬に分類されます。この少しだけ刺激する作用の事を内因性交感神経刺激作用(ISA)といい、この作用のあるなしで(+)(-)に分けられます。ISA(+)の薬は心拍数を下げすぎないため、副作用の徐脈が起こりづらい薬です。一方、ISA(-)の薬は心拍数を低下させるので頻脈の人に使いやすい薬といえます。
薬によってβ受容体への選択性やISAの有無に違いがありますので、それぞれ分類される薬をまとめます。

β1非選択的遮断薬/ISA(-)

β1受容体とβ2受容体を遮断し、ISAがない薬です。この種類の薬にはインデラル(一般名:プロプラノロール)、ナディック(一般名:ナドロール)があります。

β1受容体だけでなくβ2受容体も遮断するので気管支を収縮する作用を有します。そのため気管支喘息の人には使えません。ISA(-)のため、心拍数を下げる作用を有します。

β1非選択的遮断薬/ISA(+)

β1受容体とβ2受容体を遮断し、ISAがある薬です。この種類の薬にはミケラン(一般名:カルテオロール)、カルビスケン(一般名:ピンドロール)があります。

インデラル、ナディックと同様に気管支喘息の人には使えません。ISA(+)のため、心拍数を下げる作用は小さいです。

β1選択的遮断薬/ISA(-)

β1受容体を選択的に遮断し、ISAがない薬です。この種類の薬にはテノーミン(一般名:アテノロール)、メインテート(一般名:ビソプロロール)、ケルロング(一般名:ベタキソロール)、ロプレソール、セロケン(一般名:メトプロロール)があります。内服薬だけでなく、ビソノテープ(一般名:ビソプロロール)という貼り薬もあります。

なおメインテートの0.625mg錠は高血圧に保険適応はありません。

この種類の薬はβ1を選択的に遮断するので、気管支喘息の人も慎重に観察すれば服薬することができます。

β1選択的遮断薬/ISA(+)

β1受容体を選択的に遮断し、ISAがある薬です。この種類の薬にはアセタノール(一般名:アセブトロール)、セレクトール(一般名:セリプロロール)があります。

この種類の薬はβ1を選択的に遮断するので、気管支喘息の人も慎重に観察すれば服薬することができます。