今回はインフルエンザ治療薬についてまとめていきます。現在、保険適用となるインフルエンザ治療薬はシンメトレル(一般名:アマンタジン)、タミフル(一般名:オセルタミビル)、リレンザ(一般名:ザナミビル)、イナビル(一般名:ラニナミビル)、ラピアクタ(一般名:ペラミビル)の5種類あります。
そのうち、シンメトレルは現在ほとんど使用されていません。シンメトレル以外の4種類は薬の効き方が同じです。
インフルエンザウイルスの増殖機序
インフルエンザウイルスが体内に入ると、ウイルス自身は更に体内の奥深くにある細胞の中に侵入してきます。するとウイルスは自身が持っているRNAという遺伝子(蛋白質を作る設計図のようなもの)を放出して、侵入した細胞に自身のコピーを作らせます。そうしてコピーされたウイルスは細胞から飛び出していき、ますます感染が広がっていきます。
インフルエンザ治療薬の作用機序
シンメトレル以外の4種類の薬は、細胞からウイルスが飛び出していく過程で働くノイラミニダーゼという酵素を阻害して、ウイルスを細胞内に閉じ込めるように働きます。その結果、インフルエンザウイルスの増殖が抑えられます。この作用機序の薬は体内でインフルエンザウイルスが増殖しきった後では効果が期待できません。発症後48時間以内に投与する必要があります。
インフルエンザ治療薬について
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型がありますが、効果があるのはA型とB型のみです。
また、インフルエンザ治療薬の服薬と異常行動の関連が否定できないとのことで、服薬中はしっかりと観察する必要があります。
インフルエンザ治療薬4種類の特徴を次にまとめていきます。
タミフル
タミフルは唯一の内服薬です。タミフルにはカプセルとドライシロップ(散剤)があります。治療で用いられる投与方法は、成人では1回1カプセル(75mg)を1日2回5日間投与です。小児の場合、体重1kgあたり薬の成分量として幼小児(1歳~6歳)では1回に2mg、新生児や乳児(1歳未満)では1回に3mgを1日2回5日間投与になります。腎臓で排出される薬なので、腎臓の機能が低下している人は投与量を調節する必要があります。
イナビル
イナビルは吸入薬です。作用する時間が長いため、一度吸入すると服薬終了なので何日間も続けて服薬する必要がない薬です。10歳以上の人は2容器、10歳未満の人は1容器を吸入します。一度で服薬完了なので楽に服薬が終了しますが、逆にいうと服薬の失敗が許されない薬であるともいえます。吸入をしっかり行うことが不安な人、特に小児や高齢者にとっては使いづらい薬と言えるかもしれません。
リレンザ
リレンザはイナビル同様吸入薬です。この薬は年齢による投与量の違いはありません。成人、小児問わず1回2ブリスターを1日2回5日間吸入します。イナビルとは異なり、5日間吸入を続ける必要があります。
イナビルとリレンザには乳蛋白が含まれているので、乳製品にアレルギーがある人には慎重に投与する必要があります。
ラピアクタ
ラピアクタは唯一の点滴注射薬です。内服、吸入が両方困難な患者さんに適している薬です。この薬は腎臓で排出されるので、腎機能の値によって投与量が変わります。