薬剤師が考える健康に大切なこと

高血圧の治療薬⑦ α1遮断薬、αβ遮断薬

血圧は心臓から拍出される血液量と血管抵抗性(血液の流れづらさ)によって決まります。

α1受容体とβ1受容体

心臓にはβ1受容体が存在していて、それを刺激すると心拍数が増えて血圧が上昇し、遮断すると心拍数が減って血圧が下がります。
また、抹消血管にはα1受容体が存在しています。このα1受容体を刺激すると血管が収縮し血管抵抗性が上昇して血圧が上がります。逆にα1受容体を遮断すると血管が拡張して血管抵抗性が下がり血圧が下がります。この様に血管に作用して血圧を下げるのがα1遮断薬です。

α1遮断薬

α1受容体にはいくつか種類があります。この種類のことをサブタイプといいます。抹消血管に存在するのはα1B受容体です。α1B受容体の他にはα1A受容体とα1D受容体があります。

α1A受容体

α1A受容体は前立腺に多く存在しています。α1A受容体を刺激すると尿が漏れないように尿道が閉まり、遮断すると尿が排出されるように尿道が開きます。前立腺肥大の人にはα1A遮断薬が使われます。これは、前立腺肥大で尿が出にくい人は尿道が狭くて尿が出にくくなっているため、α1A遮断薬を服薬すると尿道が広がり尿が出やすくなるためです。

α1D受容体

α1D受容体は膀胱に多く存在し、尿を蓄える機能に関与しています。前立腺が肥大して尿道が狭い状態が続くと膀胱が緊張状態になって、膀胱にそれほど尿が溜まっていなくても尿を出そうとします。これが過活動膀胱という状態で、いわゆる頻尿です。α1D受容体を遮断すると、膀胱の緊張が緩和されて尿をより沢山溜められるようになります。その結果、頻尿が改善されてトイレの回数が減ることになります。
α1受容体のどのサブタイプを遮断するかによって高血圧、前立腺肥大、排尿障害の治療薬に分類されます。

高血圧に使われるα1受容体遮断薬

高血圧に使われる薬としては、α1B受容体の遮断作用を有するミニプレス(一般名:プラゾシン)、カルデナリン(一般名:ドキサゾシン)、エブランチル(一般名:ウラピジル)、デタントール(一般名:ブナゾシン)、ハイトラシン、バソメット(一般名:テラゾシン)があります。

αβ遮断薬

αβ遮断薬はα遮断薬による血管拡張作用とβ遮断薬による循環血液量の減少作用の両方を有する薬です。薬としては、アーチスト(一般名:カルベジロール)、アロチノロール(一般名:アロチノロール)、カルバン(一般名:ベバントロール)、トランデート(一般名:ラベタロール)、ローガン(一般名:アモスラロール)があります。

薬の成分量によって適応疾患が違う薬があります。アーチストには1錠中の成分量が1.25mg、2.5mg、10mg、20mgのものがあります。この中で高血圧に保険適応があるのは10mgと20mgのみです。