乳児がボツリヌス症で死亡したというニュースをみました。ボツリヌス症とはどのような病気なのでしょうか?
ボツリヌス症とは、ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素によって引き起こされる感染症で、全身の筋力が低下して様々な症状が現れます。
ボツリヌス菌は、通常土壌の中に芽胞の状態で存在します。感染した家畜を通して食肉や魚介類から感染します。
尚、芽胞とは、細菌が休眠状態になって、熱や乾燥に高い抵抗力を持つようになった状態のことです。
ボツリヌス症の原因と分類
感染経路ごとに食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス中毒)、乳児ボツリヌス症、創傷ボツリヌス症、成人腸管定着ボツリヌス症に分類されます。
食餌性ボツリヌス症
ボツリヌス中毒ともいわれています。食品中でボツリヌス菌が増殖し、産生された毒素を経口摂取することで発症します。
潜伏期間は6時間〜8日程度で、摂取した毒素の量によって決まりますが、その多くは12〜24時間です。
初期症状は、複視、弱視、眼瞼下垂、瞳孔散大などの眼症状が現れ、その後に主症状として脱力感、倦怠感、嚥下困難、発声困難、口渇、腹部膨満感、腹痛、便秘、歩行困難、握力低下、尿閉、呼吸失調などが現れます。重症になると、呼吸困難で死に至ることがあります。
原因になったことがある食物には、ニシンのいずし、輸入キャビア、辛子レンコン、輸入された瓶詰めグリーンオリーブなどがあります。
乳児ボツリヌス症
1歳未満の乳児がボツリヌス菌の芽胞を経口摂取し、その後消化管の中で増殖したボツリヌス菌が産生する毒素によって発症する感染症です。
生後2週未満では、初乳に含まれる成分がボツリヌス菌の増殖を抑えるため、発症しにくいとされています。
また、腸内細菌の種類とボツリヌス菌が増殖する条件は関係しているため、人によってかかりやすさが違います。
症状としては、便秘、筋力低下、哺乳力低下、泣き声が弱くなる、無表情などがみられ、その他に食餌性ボツリヌス症と同様の症状がみられます。
原因になったことがある食物には、ハチミツ、井戸水などがあります。現在では、『1歳未満の乳児にはハチミツを与えないように』と厚労省が指導しています。
創傷ボツリヌス症
創傷部位でボツリヌス菌が増殖して、産生した毒素によって発症する感染症です。潜伏期間は4〜18日で、食餌性ボツリヌス症よりも長いです。
成人腸管定着ボツリヌス症
1歳以上の人で、乳児ボツリヌス症と同じ機序で発症する感染症です。はっきりとした原因食物はわかっていません。
その他には、ボツリヌス毒素を使用した、ボトックス注射の過剰投与によるボツリヌス症があります。
予防と治療
予防に関しては、ボツリヌス菌にワクチンはないため、感染の可能性がある食物を避けるようにしなくてはいけません。
また、ボツリヌス症になったら、抗毒素の投与をしたり、重度のボツリヌス症では数週間〜数ヶ月の間、呼吸管理ができる施設で治療を行います。