認知症と間違えやすい病態

認知症と思っていても実は違う病気・病態であることがあります。
今回は認知症と間違えやすい病態とその違いついてまとめていきます。

せん妄

  • 発症:認知症は緩徐なのに対して、せん妄は急激に現れます。
  • 初期症状:認知症では記憶力の低下、せん妄では錯覚・幻覚・妄想・興奮が現れます。
  • 日内変動:認知症は変化に乏しく、せん妄は夜間や夕刻に悪化する傾向があります。
  • 持続について:認知症は永続的であるのに対して、せん妄は数日〜数週間が多いです。
  • 身体疾患について:せん妄は合併していることが多いです。
  • 薬剤の関与:認知症はありませんが、せん妄では服薬している薬が影響していることがあります。
  • 環境の関与:認知症はありませんが、せん妄では環境の影響を受けることがあります。

以上のことから、せん妄は意識障害による急性の精神症状で、不穏・易刺激性・暴言・幻覚などが出現して理解や判断が困難になった状態であるといえます。
せん妄は認知症と併発することが多く、認知症とせん妄両方の病名がつくことがあります。

うつ状態

  • 発症:認知症は緩徐なことが多いですが、うつ状態では発症の日時はある程度明確です。
  • 経過について:認知症では経過は緩徐で、変動が少なく、一般的に進行性です。うつ状態では、発症後に症状が急激に進行し、日内・日差変動が認められます。
  • 持続について:認知症では永続的で、うつ状態では数時間〜数週間。
  • もの忘れの訴え:認知症では自覚がないことがありますが、うつ状態ではもの忘れの訴えを強調する傾向があります。
  • 自己評価について:認知症では自分の能力低下を隠しますが、うつ状態では自分の能力低下を嘆きます。
  • 言語理解、会話:認知症では困難ですが、うつ状態では困難ではありません。
  • 答え方:認知症では誤った答えだったり、作話やつじつまを合わせようとします。うつ状態では質問に「わからない」と答える傾向があります。
  • 症状について:認知症では昔の記憶よりも最近の記憶の障害が目立ちますが、うつ状態では昔の記憶も最近の記憶も同様に障害されます。

統合失調症

色々な認知機能障害をきたしますが、認知症よりも発症年齢が若く、認知症ほど重篤ではありません。

健忘性障害

他の認知機能障害(失語、失行、失認など)がなく、重度の記憶障害が特徴。
その他に認知症と間違えやすい病態として、精神遅滞、詐病、虚偽性障害、加齢に伴う正常な認知機能低下などがあります。