薬剤師が考える健康に大切なこと

便秘症治療薬⑤ 漢方薬

便秘症の治療に、漢方薬が使われることもあります。便秘症に使われる漢方薬としては、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)、潤腸湯(じゅんちょうとう)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)、大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)、通導散(つうどうさん)、三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)、麻子仁丸(ましにんがん)、大承気湯(だいじょうきとう)、桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)、大建中湯(だいけんちゅうとう)などがあります。

大黄牡丹皮湯

比較的体力がある人で、下腹部が緊張し、抵抗・圧痛があり、便秘する人で瘀血を伴う場合に用いられます。

瘀血とは、漢方の一概念であり、主に婦人科疾患、出血性疾患などに起こり、静脈系のうっ血、出血などに関連した症候群のことをいいます。

潤腸湯

体力が中等度からやや低下した人の弛緩性または痙攣性便秘に用いられます。

時に、老人や胃腸機能の低下した人の便秘や皮膚枯燥、腹壁弛緩し糞塊が触知される場合に用いられます。

桃核承気湯

体格や体力が充実した人で、瘀血に伴い、左下腹部に抵抗・圧痛があり(小腹急結)、のぼせがある便秘に用います。

時に、頭痛、めまい、不眠、不安、手足の冷えなど精神神経症状を伴う場合や、月経不順、月経困難などがある婦人に用います。

防風通聖散

体力が充実した肥満者の便秘に用います。

調胃承気湯

体力が中等度の人の便秘に用います。時に、腹部膨満感が強く、腹痛がある便秘の場合に用います。

大黄甘草湯

常習便秘に広く用いられます。

通導散

体格、体力が充実した人で、心窩部(みぞうち)が苦しく圧痛があり、瘀血がある便秘に用います。

時に、頭痛、のぼせ、不眠、不安などの精神神経症状を伴う場合や、桃核承気湯より精神神経症状ご激しい場合、月経不順や月経困難がある婦人に用います。

三黄瀉心湯

体格、体力が充実した人で、のぼせ気味で顔面紅潮する場合の便秘に用います。

時に、気分がイライラして落ち着かず、精神不安や不眠を訴える場合や、心窩部の膨満感がある場合や、鼻出血、下血などがある場合に用います。しかし、出血が長引いて貧血が著しい場合は用いません。

麻子仁丸

体力が中等度からやや低下した人の習慣性便秘で、老人や病後の虚弱者に用います。

時に、大便が硬く塊状を呈する便秘に用います。

大承気湯

体力が充実した肥満体質の人の便秘に用います。時に、不安、不眠、興奮などの精神症状を伴う場合に用います。

桂枝加芍薬大黄湯

比較的体力が低下した人で、腹部膨満があり、腸内の停滞感や痛みがある場合の便秘に用います。

時に、便意があるがすっきり排便しない場合や、下剤服用後の腹痛、開腹術後に便が快通しない場合に用います。

大建中湯

体力が低下した人で四肢や腹部が冷えて、腹痛や腹部膨満感、鼓腸(腸管内に大量のガスが溜まった状態)がある場合に用います。

時に、腸壁が薄く軟弱無力で腸の蠕動不安を認める場合や、冷えにより症状が悪化する場合、開腹術後の腸管通過障害に伴う腹痛や腹部膨満感がある場合に用います。