便秘症治療薬② 浸透圧性下剤

下剤は作用機序の違いで、膨張性下剤、浸透圧性下剤、刺激性下剤、上皮機能変容薬、消化管運動賦活薬、漢方薬、坐剤、浣腸に分類されます。

浸透圧性下剤

浸透圧性下剤は便に含まれる水分の量を多くし、便を柔らかくして排便しやすくする薬です。

浸透圧性下剤には、塩類下剤、糖類下剤、浸潤性下剤、ポリエチレングリコール製剤があります。

塩類下剤

特徴

塩類下剤は、金属イオンであるマグネシウムによって便秘を和らげます。

習慣性がなく、比較的緩やかに作用を示します。服用後約2~6時間で作用が現れます。

まれに重大な副作用として高マグネシウム血症を示すことがあります。特に、高齢者や腎機能障害がある人は長期の服用に注意が必要です。

血清マグネシウム値の基準値は1.7~2.6mg/dLで、高マグネシウム血症では、口渇、吐き気や嘔吐、皮膚紅潮、筋力低下、傾眠、血圧低下、徐脈などがみられることがあり、最悪の場合は心停止に至ることもあります。

また、同時に服用すると効果が弱くなる薬がいくつかあり、ニューキノロン系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬と同時に服用すると、マグネシウムとキレートを形成して抗菌薬の吸収が低下する可能性があるので、2時間以上間隔を開けて服用することが望ましいとされています。

更に、大量の牛乳やカルシウム製剤と併用すると高カルシウム血症やアルカローシス、急性腎障害などのミルク・アルカリ症候群が現れることがあります。

尚、胃酸と膵液で活性化する必要があるため、食後に服用した方が効果が強くなり、パリエットなどのPPI(プロトンポンプインヒビター)内服中の人や、胃切除をした人では効果が弱くなります。

塩類下剤には、酸化マグネシウム(商品名:マグミットなど)、水酸化マグネシウム(商品名:ミルマグ)、硫酸マグネシウムがあります。

禁忌

ミルマグ錠は添加物としてカゼインを含有しているため、牛乳アレルギーがある人は禁忌となっています。

糖類下剤

特徴

塩類下剤と違い、長期に服用しても高マグネシウム血症の心配がありません。

安全性が高く、習慣性がありません。小児の便秘にも使われます。

糖類下剤には、ラクツロース(商品名:モニラックなど)があります。

禁忌

モニラックには、ラクツロースの他にガラクトース及び乳糖を含有しており、ガラクトース血症の人は禁忌になっています。

浸潤性下剤

特徴

ジオクチルソジウムスルホサクシネートという界面活性剤の働きで、水分の少なくなった硬結便に水分を浸透させます。

処方薬にジオクチルソジウムスルホサクシネート単剤はなく、腸の蠕動運動を促進する作用があり、カスカラサグラダ皮中の有効配糖体であるカサンスラノールとの配合剤であるビーマス配合錠、ベンコール配合錠があります。

禁忌

症状が悪化する恐れがあるため、急性腹症が疑われる人、重症硬結便、痙攣性便秘の人は禁忌となっています。

ポリエチレングリコール製剤

ポリエチレングリコール製剤にはモビコール配合内用剤があります。

特徴

主成分であるポリエチレングリコールの浸透圧効果によって腸管内の水分量が増加する結果、便中の水分量が増加して便が軟化します。

また、便の容積が増大することで、大腸の蠕動運動が活発になって排便が促されます。
また、モビコール配合内用剤には、腸管内の電解質バランスを維持し、便中の水分を適切な浸透圧で保つために、電解質が配合されています。

モビコール配合内用剤は、2歳以上なら服用することができます。

服用方法

モビコール配合内用剤は水に溶かして服用する薬で、1包あたりコップ1/3程度(約60mL)の水に溶解して服用します。

溶解後は速やかに服用する必要がありますが、やむを得ず保存する必要がある場合は、冷蔵庫に保存して、できるかぎり速やかに服用するようにします。

用法・用量

2歳以上7歳未満:1日1回、1回1包を服用します。症状に応じて適宜増減しますが、1日1~3回、最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とします。但し、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包までとします。

7歳以上12歳未満:1日1回、1回2包を服用します。症状に応じて適宜増減しますが、1日1~3回、最大投与量は1日量として4包まで(1回量として2包まで)とします。但し、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として1包までとします。

12歳以上:1日1回、1回2包を服用します。症状に応じて適宜増減しますが、1日1~3回、最大投与量は1日量として6包まで(1回量として4包まで)とします。但し、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として2包までとします。

禁忌

腸閉塞、腸管穿孔、重症の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、中毒性巨大結腸症等)の患者さん、又はその疑いがある患者さんは、病態が悪化する恐れがあるので禁忌になっています。

本剤成分に対して過敏症の既往歴がある患者さんは禁忌です。