便秘症治療薬③ 刺激性下剤

下剤は作用機序の違いで、膨張性下剤、浸透圧性下剤、刺激性下剤、上皮機能変容薬、消化管運動賦活薬、漢方薬、坐剤、浣腸に分類されます。

刺激性下剤は大腸を刺激し、大腸の動きを活発にして便秘を解消します。服用後およそ6~12時間で効果が現れるので、寝る前に服用するのが一般的です。

刺激性下剤には、アントラキノン系とジフェニール系があります。

 

アントラキノン系

特徴

植物成分由来の下剤です。大腸内で腸内細菌の働きでレインアンスロンとなり、これが大腸を刺激することによって瀉下作用を表します。

便秘改善効果の高い薬ですが、大腸刺激に対して耐性が生じるため、服用期間が長いと効果が落ちてきます。そのため、長期間の服用は避ける必要があります。

また、アントラキノン系下剤を服用すると尿の着色(黄褐色~赤色)がみられることがあります。これは、薬の成分が尿と反応しているだけなので特に問題はありません。

アントラキノン系下剤には、センナ(商品名:アジャストAなど)、センノシド(商品名:プルゼニドなど)があります。

尚、センノシドはセンナに含まれている有効成分です。

大腸メラノーシス

アントラキノン系下剤を長期にわたって服用を続けると、大腸メラノーシスになることがあります。

大腸メラノーシスとは、大腸の粘膜がメラニン色素で黒っぽく変色した状態のことをいい、大腸メラノーシスになると、痛みなどの自覚症状はありませんが大腸の機能が低下します。その結果、大腸の動きがますます悪くなり、便秘が更に悪化してしまいます。

大腸メラノーシスから元の状態に戻すには、アントラキノン系下剤を中止し、約1年かかるといわれています。

そのため、アントラキノン系下剤の使用はなるべく短期間にして、それ以降は他の下剤に切り替えたり、生活習慣の改善などを行う必要があります。

 

禁忌

センナとセンノシドは、症状を増悪する恐れがあるため、電解質失調(特に低カリウム血症)のある人には大量投与を避ける必要があり、急性腹症が疑われる人、痙攣性便秘、重症硬結便のある人の服薬は禁忌となっています。

本剤成分又はセンノシド製剤に過敏症の既往歴のある人は禁忌になっています。

また、服用した場合、子宮収縮を誘発して、流早産の危険性があるため、妊婦又は妊娠している可能性のある人は原則禁忌となっています。

 

 

ジフェニール系

特徴

胃、小腸ではほとんど作用せず、大腸細菌叢由来の酵素であるアリルスルファターゼによって加水分解されて活性型のジフェノール体になります。このジフェノール体は、腸管蠕動運動の亢進作用、水分吸収阻害作用により瀉下作用を示します。

便秘改善効果が高く、アントラキノン系下剤と比較して耐性が生じにくい薬です。

ジフェニール系下剤には、ピコスルファートナトリウム(商品名:ラキソベロンなど)があります。

ピコスルファートナトリウムには内用液があり、1滴ごとの細かい調節をすることができます。

 

禁忌

症状が増悪する恐れがあるため、急性腹症が疑われる人、腸管に閉塞のある人(大腸検査前処理に用いる場合)、またはその疑いのある人は禁忌となっています。

また、本剤成分に対して過敏症の既往歴がある人は禁忌です。