認知症の不安症状に対してですが、まずは不安の原因を分析して、それが明らかになれば対策を立てます。仮に明らかにならない場合でも、生活の変化をなるべく避けて、なじみのある環境で穏やかに過ごせるようにします。
これらのようなケアを行っても症状が改善されない場合に薬物療法を検討します。薬物療法では、ベンゾジアゼピン系抗不安薬や抗精神病薬が使用されます。
以下にそれぞれ使用される薬についてまとめていきます。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、認知症における軽度の不安症状に対して使用されることがあります。
使用する際は、長時間作用型は副作用が現れやすいので、短時間作用型の薬の使用が推奨されます。
副作用には、過鎮静、運動失調、失見当識、錯乱、脱抑制などがあります。
認知症が進行するとこれらの副作用が出やすくなって、中等度から高度の認知症では記憶障害が増悪します。また、軽度の認知症の段階から使用していたベンゾジアゼピン系抗不安薬を中止すると記憶や注意力が改善する場合があります。これらのことから、中等度から高度の認知症の人の不安障害にはベンゾジアゼピン系抗不安薬は適していないといえます。
認知症の不安症状に対してのベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用は、今後も有効性や安全性について検討が必要であるといえそうです。
抗精神病薬
定形型抗精神病薬と非定形型抗精神病薬に分類されます。定形型抗精神病薬に分類されるセレネース(一般名:ハロペリドール)が有効ですが、それ以上に非定形型抗精神病薬に分類されるリスパダール(一般名:リスペリドン)、セロクエル(一般名:クエチアピン)、ジプレキサ(一般名:オランザピン)が不安症状に対して有効とされています。
リスパダールは1日1.5mg程度の低用量なら高齢者に安全で、不安症状をはじめ、睡眠障害、攻撃性、易刺激性、幻覚、激越、恐怖症に対しても用いられます。
セロクエルは、中用量で不安症状、更に激越、幻覚、うつ症状に対して用いられます。
ジプレキサは、不安症状をはじめ、幻覚、妄想、激越、攻撃性に対して用いられます。
以上が、認知症の不安症状に使用される薬です。