認知症では、幻覚、妄想、暴力、徘徊、不穏、性的脱抑制などの周辺症状が現れることがあります。
まずは患者さん本人の話を否定も肯定もしないように傾聴し、原因になることが判明したら、それを取り除くようにケアをします。そこでは、安心感や生きがいを維持できるようにします。
こういったケアにより改善しない場合に、薬物療法を検討します。
それぞれの症状に対して使用される薬を次にまとめていきます。
幻覚、妄想
非定形型抗精神病薬
非定形型抗精神病薬が有効であるとされていますが、適応外使用になるので注意が必要です。
ジプレキサ(一般名:オランザピン)を1日5〜10mg、リスパダール(一般名:リスペリドン)を1日0.5〜2mg、セロクエル(一般名:クエチアピン)を12.5〜25mg、エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)を1日10mgで効果がみられています。
非定形型抗精神病薬の使用、抗コリン作用による副作用と認知症の悪化の可能性があるので注意が必要です。
定形型抗精神病薬
定形型抗精神病薬であるセレネース(一般名:ハロペリドール)を1日2〜3mgで、アルツハイマー型認知症の幻覚や妄想に効果がみられています。
コリンエステラーゼ阻害薬
コリンエステラーゼ阻害薬である、アリセプト(一般名:ドネペジル)、リバスタッチ、イクセロン(一般名:共にリバスチグミン)は、パーキンソン病での幻視に有効とされています。しかし、認知症に対するデータがあまりないので、有効かどうかははっきりわかっていません。
漢方薬
その他に漢方薬の抑肝散が有効だともいわれています。
暴力
症状としては、焦燥性興奮と類似しています。
暴力に対して、非定形型抗精神病薬のジプレキサ、リスパダール、セロクエル、エビリファイや、抗てんかん薬のテグレトール(一般名:カルバマゼピン)、デパケン(一般名:バルプロ酸)、コリンエステラーゼ阻害薬が有効です。その他に、β遮断薬であるインデラル(一般名:プロプラノロール)が有効であるというデータがあります。
徘徊
徘徊に関するデータは少ないですが、非定形型抗精神病薬のリスパダール、抗てんかん薬のデパケン、β遮断薬のインデラルが有効というデータがあります。
不穏
焦燥性興奮に有効な薬が効果を期待できます。
非定形型抗精神病薬のジプレキサ、リスパダール、セロクエル、エビリファイ、抗てんかん薬のテグレトール、デパケン、コリンエステラーゼ阻害薬のアリセプト(一般名:ドネペジル)、レミニール(一般名:ガランタミン)、グルタミン酸阻害薬のメマリー(一般名:メマンチン)、漢方薬の抑肝散が有効です。
性的脱抑制
データがあまりありませんが、抗うつ薬のパキシル(一般名:パロキセチン)、アナフラニール(一般名:クロミプラミン)、デジレル、レスリン(一般名:共にトラゾドン)、非定形型抗精神病薬のセロクエルが効果を示す可能性があります。その他に、抗アンドロゲン薬、エストロゲンなどのホルモン剤を使用することもあります。
以上が、認知症の周辺症状に有効とされる薬です。