認知症に伴う焦燥性興奮に対しては、その原因を分析してそれを排除できるようなケアを行います。これが不十分な場合に薬物療法を検討します。薬物療法では、非定形型抗精神病薬、抗てんかん薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、グルタミン酸阻害薬、漢方薬が使用されます。
以下にそれぞれ使用される薬についてまとめていきます。
非定形型抗精神病薬
以前は定形型抗精神病薬の1つであるセレネース(一般名:ハロペリドール)が使用されていましたが、現在は非定形型抗精神病薬であるリスパダール(一般名:リスペリドン)、セロクエル(一般名:クエチアピン)、ジプレキサ(一般名:オランザピン)、エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)が主に使用されます。
リスパダールでは1日0.5〜2mg、セロクエルでは1日100mg、ジプレキサでは1日5〜10mg、エビリファイでは1日10mgで焦燥性興奮に有効であるとされています。
抗てんかん薬
抗てんかん薬は、精神科の治療では気分安定薬として使われることがあります。
抗てんかん薬のテグレトール(一般名:カルバマゼピン)、デパケン(一般名:バルプロ酸)が有効というデータがあります。
コリンエステラーゼ阻害薬、グルタミン酸阻害薬
コリンエステラーゼ阻害薬である、レミニール(一般名:ガランタミン)では軽度から中等度のアルツハイマー病の焦燥性興奮に対して軽度の改善がみられ、アリセプト(一般名:ドネペジル)ではアルツハイマー病の焦燥性興奮に対して1日10mg内服で改善がみられたというデータがあります。しかしながら、改善がみられなかったというデータもあるので、服薬により劇的な焦燥性興奮の改善は期待できないかもしれません。
グルタミン酸阻害薬であるメマリー(一般名:メマンチン)については、中等度から高度のアルツハイマー病の焦燥性興奮に対して、1日20mg内服で改善したというデータがあります。
漢方薬
抑肝散が有効であるというデータがあります。
以上が、認知症に伴う焦燥性興奮に使用される薬です。