脳の器質的変化があったり、認知症の初期に能力の低下を指摘されたり、非難されたりするとうつ症状が引き起こされやすくなります。
うつ症状
認知症に伴ううつ症状への非薬物療法では、不安にならないようにすることが重要で、非難、叱責、激励などをしないようにします。
薬物療法
薬物療法に関してですが、認知症とは関係なく発症したうつ病に対しては、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬を使用します。
認知症に伴ううつ症状に対しては、これらの抗うつ薬を使用したデータが多くないため、正確な評価ができていません。
しかしながら、認知症状に対して使用される、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の1つであるアリセプト服用で、うつ症状の改善がみられたというデータがあります。
睡眠障害
続いて睡眠障害についてですが、加齢によって生体維持機構に様々な変化が生じます。それにより、高齢者の大半は睡眠障害を抱えています。
睡眠障害の原因としては、ストレス、薬、身体疾患や精神疾患などがあります。原因が特定できたら、その問題に対処します。
更に、夜間の雑音を少なくしたり、照明の明るさを調整したり、日中はなるべく体を動かすようにて、横にならないようにするなどといった対応を検討します。
これらで効果不十分の場合に、薬物療法を検討します。
薬物療法
睡眠障害に対してはベンゾジアゼピン系薬が主に使用されます。高齢者では、薬物代謝能力が低下していており、副作用が起こりやすいので注意する必要があります。
特に長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬では、日中の傾眠や転倒に特に注意が必要です。その他にも依存の形成や、退薬時の不安や緊張などが起こる可能性があります。
これらのことより、認知症の人には短時間作用型の薬を、成人量の1/3〜1/2量から開始して様子をみる必要があります。
ベンゾジアゼピン系以外の薬では、非定形型抗精神病薬であるリスパダールや漢方薬の抑肝散が有効であるというデータがあります。
以上、今回は認知症のうつ症状と睡眠障害の薬物治療についてまとめました。