前立腺肥大症の治療薬③

PDE5阻害薬

肥大した前立腺の筋肉や尿道の筋肉の緊張を和らげて弛緩させて、尿が出やすくなるように作られたのがPDE5阻害薬です。

作用機序

生体内では一酸化炭素(NO)が筋肉の弛緩に関わっています。一酸化炭素が生体内で作用するとcGMP(サイクリックGMPや環状グアノシンリン酸といわれます)という物質が作られます。cGMPは生成した組織の筋肉を弛緩させる作用があります。このcGMPが前立腺や尿道の筋肉を弛緩させて尿が出やすくなります。しかしcGMPを分解する酵素が存在し、分解されると筋肉を弛緩させる作用がなくなってしまいます。その酵素がPDE5(ボスホジエステラーゼ5といいます)であり、このPDE5の働きを阻害してcGMPの作用を持続させるようにした薬がPDE5阻害薬です。
このPDE5阻害薬ですが、もともとはED(勃起不全)の治療薬として使われていました。陰茎の血管平滑筋を弛緩させて血流を良くしてEDに対して効果を発揮します。

分類される薬

前立腺肥大症に使用されるPDE5阻害薬としてはザルティア(一般名:タダラフィル)があります。

副作用

副作用には血管が広がることによる低血圧や頭痛、多汗、紅潮、鼻血、心筋梗塞などがあります。

禁忌

ザルティアには併用禁忌薬があります。体内で一酸化炭素やcGMPを増加させる薬と併用すると、副作用である低血圧が起こりやすくなるので一緒に服薬することができません。
このような併用禁忌薬にはアデムパス、硝酸剤や一酸化炭素を供与する薬である二トロールやアイトロールなどがあります。
また合併症として不安定狭心症がある人、心不全(NYHA分類Ⅲ度以上)がある人、コントロールが難しい不整脈がある人、コントロールが難しい高血圧または低血圧がある人、直近3ヶ月以内に心筋梗塞になった人、直近6ヶ月以内に脳梗塞または脳出血になった人、重度の肝機能障害または腎機能障害がある人、本剤成分に過敏症の既往歴がある人は禁忌のため服薬できません。

植物製剤

前立腺肥大症の進行には炎症も関与しているといわれています。前立腺が肥大して尿路が狭くなると、膀胱の血流が悪くなってフリーラジカルや過酸化脂質が産生します。これらの物質によって膀胱内の神経や筋肉が酸化、損傷されて炎症が引き起こされると考えられています。この炎症を抑える作用を持つのが植物製剤です。

分類される薬

植物製剤としてはエビプロスタットがあります。エビプロスタットには有効成分としてオオウメガサソウエキス、ハコヤナギエキス、セイヨウオキナグサエキス、スギナエキス、精製小麦胚芽油が含まれており、これらの成分が持つ抗酸化作用と抗炎症作用で前立腺肥大による排尿障害を改善させます。