脂質異常症の治療薬③ フィブラート系薬

脂質異常症の治療薬の中でも使い分けがあります。スタチン系はLDLコレステロールを下げる薬です。今回は主に中性脂肪を下げる薬であるフィブラート系薬について書いていきます。

作用機序

血液中の中性脂肪は、リポ蛋白リパーゼという酵素によって分解されて遊離脂肪酸になります。遊離脂肪酸は脂肪組織など各組織に取り込まれます。フィブラート系薬はこのリポ蛋白リパーゼの働きを活性化して血液中の中性脂肪を減らします。
また、肝臓内では遊離脂肪酸から中性脂肪が合成されます。フィブラート系薬はこの遊離脂肪酸から中性脂肪への合成を抑制する作用もあります。

つまり、フィブラート系薬は中性脂肪の分解を促進、合成を抑制して血液中の中性脂肪を減らすように作用します。

フィブラート系薬の種類

フィブラート系薬にはベザフィブラート(商品名:ベザトールSR)フェノフィブラート(商品名:リピディル、トライコア)ペマフィブラート(商品名:パルモディア)、クロフィブラート(商品名:クロフィブラート)、クリノフィブラート(商品名:リポクリン)があります。

ベザトールSR

主に腎臓から排泄される薬で、腎機能によって投与量を調節する必要があります。なお、腎不全など重篤な腎疾患がある人、人工透析をしている人、血清クレアチニン値が2mg/dL以上の人、本剤成分に対して過敏症の既往歴のある人、妊婦は禁忌のため服薬できません。

また、乳汁中に移行することが示されているので、服薬している間は授乳を避ける必要があります。

リピディル、トライコア

肝障害、胆のう疾患のある人は禁忌のため服薬できません。更に腎機能が低下している人は投与量を調節する必要がありますし、血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上又はクレアチニンクリアランスが40mL/min未満の腎機能障害のある人、妊婦、授乳婦、本剤成分に対して過敏症の既往歴のある人は禁忌になるので服薬することができません。

パルモディア

腎機能が低下している人は投与量を調節する必要があり、血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上又はクレアチニンクリアランスが40mL/min未満の腎機能障害のある人、本剤成分に対して過敏症の既往歴のある人、重篤な肝障害のある人、Child-Pugh分類B又はCの肝硬変のある人、胆道閉塞のある人、胆石がある人、妊婦は禁忌のため服薬できません。

また、シクロスポリン(商品名:サンデュミン、ネオーラル)やリファンピシン(商品名:リファジン)を服用している人は併用禁忌になるので服薬することができません。

また、乳汁中に移行することが示されているので、授乳中は服薬を避けて、やむを得ず服薬する場合は授乳を中止する必要があります。

クロフィブラート

胆石又はその既往歴のある人、妊婦、授乳婦は禁忌のため服用することができません。

リポクリン

妊婦、授乳婦は禁忌のため服用することができません。

注意点

フィブラート系薬やスタチン系薬の重大な副作用の1つに横紋筋融解症があります。横紋筋融解症というのは、筋肉が溶けてしまう病態です。筋肉が溶けると、筋肉の成分であるミオグロビンが大量に腎臓に流れ込んで急性腎不全になったり、多臓器不全などを併発して生命に危険が及ぶ可能性があります。フィブラート系薬やスタチン系薬を服薬し始めて、数週間から数ヶ月経ってから発症することが多いです。

また、長期間服薬をしていても併用薬の変更などによって、横紋筋融解症が発症することもあるので注意が必要です。さらに風邪をひいたり、脱水状態にあると発症する可能性が上昇するようです。

この横紋筋融解症の初期症状として、筋肉痛、手足のしびれ、手足に力が入らない、全身がだるい、尿の色が赤褐色になる、といった症状があります。この様な症状が出た場合は、すぐに服薬を中止して医療機関に相談する必要があります。

フィブラート系薬やスタチン系薬以外にも抗生物質や抗精神病薬、抗パーキンソン病薬、電解質の異常を引き起こす可能性のある薬でも横紋筋融解症が副作用として起こる可能性があります。