ホルモン補充療法(HRTと略されます)は、分泌が少なくなった女性ホルモンである卵胞ホルモンや黄体ホルモンを補充する治療法です。しかし、この治療法を行うといくつかの病気にかかるリスクが高くなると言われています。
子宮内膜癌
まず子宮内膜癌のリスクです。閉経後の女性が卵胞ホルモンを1年以上服薬すると、子宮内膜癌になるリスクが服薬期間が長くなるほど高くなるとされています。しかし、このリスクは黄体ホルモンを併用することで抑えられるとされています。
乳癌
次に乳癌のリスクですが、アメリカでの試験では閉経後の女性が卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤を服薬すると乳癌のリスクが高くなるとされています。また、子宮摘出した人が卵胞ホルモン単独を服薬した場合はそのリスクは高くならないとされています。
イギリスでの試験では、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを併用している人は、服薬期間が長くなるほど乳癌のリスクが高くなるとされています。
認知症
認知症については、アメリカの試験では65歳以上の閉経後の人が卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤を服薬すると、アルツハイマー病を含む認知症のリスクが高くなるとされています。
卵巣癌
卵巣癌については、疫学調査において閉経後の人が卵胞ホルモンを長期間服薬すると卵巣癌のリスクが高くなるとされています。またアメリカの試験では、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤を服薬すると卵巣癌のリスクが高くなる傾向があるとされています。
冠動脈性心疾患
冠動脈性心疾患については、アメリカの試験では卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤を服薬すると、服薬1年後からリスクが高くなるとされています。子宮摘出した人が卵胞ホルモン単独を服薬した場合は、そのリスクは高くならないとされています。
脳卒中
脳卒中については、アメリカの試験では卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤を服薬した場合と、子宮摘出した人が卵巣ホルモン単独を服薬した場合で、共に脳卒中のリスクが高くなるとされています。
胆のう疾患
胆のう疾患については、アメリカの試験では卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤を服薬した場合と、子宮摘出した人が卵胞ホルモン単独を服薬した場合で、共に胆のう疾患にかかるリスクが高くなるとされています。
その他に、肝腫瘍やプロラクチノーマ(プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍)と卵胞ホルモン剤の関連も報告されてあるようです。
ホルモン補充療法ってかなり怖い・・・って印象を受けるかもしれませんが、これはあくまで確率の問題です。そのため現在ある症状やその重大性と照らし合わせて、どちらを優先するか医師と相談をして治療の方針を決定していくことが大切です。