認知機能障害を引き起こす薬

薬の副作用で認知症と同じような症状が出ることがあります。特に高齢者では、薬物代謝・排泄機能の低下や薬の多剤併用などが原因となって、意識状態の変化、注意力の変化、記憶力の変化、うつ症状、躁症状、不安、焦燥、せん妄、幻覚、妄想などが現れることがあります。これらの症状は認知症と判断されてしまうことがあり注意する必要があります。

以下に、認知機能障害を引き起こす可能性がある薬をまとめていきます。

認知機能障害を引き起こす可能性がある薬の分類としては、抗精神病薬、抗うつ薬、催眠薬、鎮静薬、抗パーキンソン病薬、抗てんかん薬、降圧薬、抗不整脈薬、利尿薬、ジギタリス製剤、鎮痛薬(NSAIDs、オピオイド)、副腎皮質ステロイド、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗がん剤、過活動膀胱治療薬、消化器病薬(H2受容体拮抗薬、抗コリン薬)、喘息治療薬、アレルギー治療薬(抗ヒスタミン薬)があります。
特に抗コリン作用がある薬の副作用に、記銘力や注意力の障害、せん妄があります。これらの発現の出やすさは、服薬している薬がトータルで抗コリン作用をどれほど有しているかで決まります。
抗コリン作用の強さを薬ごとに点数化したものがあるので、代表的な商品名(成分名)の形式で以下にまとめていきます。数字が大きいほど認知機能障害が起こりやすくなります。

3点

トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)、アトロピン製剤、トフラニール(一般名:イミプラミン)、ポラキス(一般名:オキシブチニン)、ポララミン(一般名:クロルフェニラミン)、コントミン(一般名:クロルプロマジン)、ペリアクチン(一般名:シプロヘプタジン)、コランチル配合顆粒(ジサイクロミン含有)、トラベルミン配合錠(シフェンヒドラミン含有)、テルネリン(一般名:チザニジン)、アタラックスP(一般名:ヒドロキシジン)、ロートエキス(ヒヨスチアミン含有)、フルメジン(一般名:フルフェナジン)、PL配合顆粒やピレチア(プロメタジン含有)、ピーゼットシー(一般名:ペルフェナジン)

2点

シンメトレル(一般名:アマンタジン)、ジプレキサ(一般名:オランザピン)、タガメット(一般名:シメチジン)、ジルテック(一般名:セチリジン)、ベネン(一般名:トリプロリジン)、デトルシトール(一般名:トルテロジン)、ノリトレン(一般名:ノルトリプチリン)、リオレサール(一般名:バクロフェン)、ノバミン(一般名:プロクロルペラジン)、ロペミン(一般名:ロペラミド)、クラリチン(一般名:ロラタジン)

1点

コムタン(一般名:エンタカポン)、ネオドパストン(一般名:レボドパ・カルビドパ)、セロクエル(一般名:クエチアピン)、エフピー(一般名:セレギリン)、レスリン(一般名:トラゾドン)、セレネース(一般名:ハロペリドール)、パキシル(一般名:パロキセチン)、ビ・シフロール(一般名:プラミペキソール)、リフレックス(一般名:ミルタザピン)、ロバキシン(一般名:メトカルバモール)、プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)、ザンタック(一般名:ラニチジン)、リスパダール(一般名:リスペリドン)

精神症状の出現や認知症状の増悪が見られて薬の関連性が考えられた場合には、薬の追加や変更、中止を検討する必要があります。
ある種の薬では、急に中止すると病気が悪化したり、逆にせん妄が誘発されることがあるので原則として減量しながら中止します。