更年期障害では卵胞ホルモンや黄体ホルモンの分泌が低下していて、様々な症状が引き起こされます。
その症状を抑えながら、ホルモンが少ない状態に体を慣らしていくのが漢方療法です。この漢方療法で主に使用されるのが当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸です。
当帰芍薬散
当帰芍薬散は、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)の6種類の生薬が配合された漢方薬です。当帰芍薬散が効果的な更年期障害の症状には、疲労感、貧血、冷え、頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸などがあります。また、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌を促進する作用があることもわかっています。
尚、当帰芍薬散は著しく胃腸が虚弱している人や、食欲不振、悪心、嘔吐がある人は、それらの症状を悪化させる可能性があるので服薬を控えた方がいいようです。これは当帰が含まれているためです。
加味逍遥散
加味逍遥散は、柴胡(さいこ)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)、当帰(とうき)、茯苓(ぶくりょう)、山梔子(さんしし)、牡丹皮(ぼたんぴ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、薄荷(はっか)の10種類の生薬が配合された漢方薬です。
加味逍遥散が効果的な更年期障害の症状には、不安、イライラ、不眠、肩こり、頭痛、上半身の熱感、発作性の発汗、下半身の冷えなどがあります。
加味逍遥散にも当帰芍薬散と同じように当帰が含まれているため、著しく胃腸が虚弱している人や、食欲不振、悪心、嘔吐がある人は、それらの症状を悪化させる可能性があるので服薬を控えた方がいいようです。
加味逍遥散には甘草という生薬が含まれています。この甘草を多く摂りすぎると、偽アルドステロン症、ミオパチーという副作用が出やすくなります。偽アルドステロン症では、低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウムや体液の貯留、浮腫、体重増加などが起こります。ミオパチーは低カリウム血症の結果として起こり、脱力感、四肢痙攣・麻痺等が起こります。いずれの場合でも、このような症状が見られたらカリウム剤の投与などの処置を行う必要があります。
桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸は、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、茯苓(ぶくりょう)、桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)の5種類の生薬が配合された漢方薬です。
桂枝茯苓丸が効果的な更年期障害の症状には、頭痛、めまい、のぼせ、肩こり、足の冷えなどがあります。
桂枝茯苓丸には桂皮が含まれています。桂皮は発疹、発赤、痒みなどの過敏症を起こす可能性があります。
当帰芍薬散と加味逍遥散は虚弱体質の人に使われますが、桂枝茯苓丸は比較的体力がある人に使われます。逆の体質の人が服薬すると期待通りの効果が得られなかったり、副作用が出やすくなりますので注意する必要があります。