前回はコリン仮説及びグルタミン酸仮説と、それぞれの仮説に基づいて開発された薬についてまとめました。
今回はそれぞれの仮説を基に開発された薬である、コリンエステラーゼ阻害薬とグルタミン酸阻害薬に分類される各薬剤の特徴についてまとめていきます。
コリンエステラーゼ阻害薬
コリンエステラーゼ阻害薬には、アリセプト(一般名:ドネペジル)、レミニール(一般名:ガランタミン)、イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ(一般名:共にリバスチグミン)があります。それぞれの薬についてまとめていきます。
アリセプト
アルツハイマー病だけでなくレビー小体型認知症にも適応があります。1日1回3mgから開始して1〜2週間服薬後に1日1回5mgに増量します。重度のアルツハイマー病やレビー小体型認知症では、1日1回5mg服薬を4週間以上服薬後に1日1回10mgまで増量します。
3mgは有効量ではなく、消化器系の副作用の発現を抑える目的で使用されます。また、10mgに増量する場合は消化器症状がないか確認しながら使用する必要があります。
アリセプトには、普通錠の他にD錠(口腔内崩壊錠)、ドライシロップ、内服ゼリーがあるため、服薬しやすい剤形を選ぶことができます。
レミニール
レビー小体型認知症には適応がなく、軽度から中等度のアルツハイマー病に使用されます。1日8mg(1回4mgを1日2回)から開始して、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量します。増量する場合は、更に4週間服薬後に1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量することができます。
1日8mgは有効量ではなく、消化器系の副作用の発現を抑える目的で使用されます。
中等度の肝障害がある場合は、1日4mg(1回4mgを1日1回)から開始して1週間以上服薬した後、1日8mg(1回4mgを1日2回)を4週間以上服薬後に増量します。尚、1日16mgを超えないようにします。
レミニールには、普通錠とOD錠(口腔内崩壊錠)があります。
リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ
レビー小体型認知症には適応がなく、アルツハイマー病だけに適応があります。1日1枚背部、上腕、胸部のどこかに貼る貼付剤です。
1日4.5mgから開始して4週間ごとに4.5mgずつ増量し、維持量として1日18mgを貼付します。
患者さんの状態によっては、1日9mgから開始して4週間後に1日18mgに増量することもできます。この場合は、消化器系の副作用の発現により注意する必要があります。
18mg未満の投与量は有効量ではなく、副作用の発現を抑える目的で使用されるので、治療のためには18mgまで増量する必要があります。
悪心などの消化器系の副作用が現れた場合は、減量するか中止します。
再開する場合、休薬期間が4日程度の場合は、消化器系の副作用が現れなかった服薬量、または中止時に服薬していた服薬量から再開します。
休薬期間が長い場合は、開始用量から再開をします。
グルタミン酸阻害薬
グルタミン酸阻害薬に分類される薬はメマリー(一般名:メマンチン)のみです。
メマリー
中等度から高度のアルツハイマー病に適応があります。レビー小体型認知症には適応がありません。
1日1回5mgから開始して1週間ごとに5mgずつ増量していき、維持量として1日1回20mgを服薬します。
20mg未満は消化器系の副作用の発現を抑える目的で使用されるので、維持量である20mgまで増量する必要があります。
ただし、高度の腎機能障害がある場合は、維持量を10mgとします。
以上が、コリンエステラーゼ阻害薬とグルタミン酸阻害薬に分類される各薬剤の特徴となります。これらの薬は全て認知症の認知症状を治す薬ではなく、進行を遅らせる薬になります。