認知症の治療薬 認知機能障害①

アルツハイマー病とレビー小体型認知症の認知機能障害に使われる薬には、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬、グルタミン酸(NMDA)阻害薬があります。
記憶にはアセチルコリングルタミンが関与していると考えられています。それぞれコリン仮説、グルタミン仮説といわれていて、それぞれの仮説に基づいてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬、グルタミン酸阻害薬が開発されました。
今回はそれぞれの仮説についての解説と、それらの仮説に基づいて開発された薬について以下にまとめていきます。

コリン仮説とコリンエステラーゼ阻害薬

記憶するためには、脳内の神経伝達物質が働く必要があります。記憶に関与する神経伝達物質としてアセチルコリンがあります。認知症の人は、脳にシミのようなものができる老人斑があったり、神経細胞の中に糸くずのようなものが蓄積する神経原線維変化が起こっています。
このように脳が変化すると、脳内のアセチルコリンの量が減って記憶に障害が出ると考えられています。
この仮説に基づいて、脳内のアセチルコリンが減少しないように開発された薬がコリンエステラーゼ阻害薬です。
コリンエステラーゼ阻害薬は脳内のアセチルコリンが分解されないように働き、脳内のアセチルコリンの減少が抑えられます。その結果、アルツハイマー病やレビー小体型認知症における認知症状の進行を遅らせることができます。

グルタミン酸仮説とグルタミン酸阻害薬

アセチルコリンの他に、記憶に関与する神経伝達物質としてグルタミン酸があります。脳内では、記憶形成が必要なときだけグルタミン酸が大量に放出されるようになっています。
アルツハイマー病の人の脳内ではグルタミン酸が常に沢山放出されています。そうなると、脳がどの情報を記憶形成すればいいのかわからなくなってしまい、更に記憶形成に関与する細胞が過剰のグルタミン酸の影響で死んでしまいます。
これらの結果から認知機能症状が生じるというのが、グルタミン酸仮説です。
この仮説に基づいて開発された薬がグルタミン酸阻害薬です。グルタミン酸阻害薬は、グルタミン酸が脳内である一定の量を超えるまでは、神経細胞が働かないようにブロックします。それにより、グルタミン酸の神経細胞への作用を正常に近い状態にして認知症状の進行を遅らせることができます。

以上のように、記憶形成にはいくつかのメカニズムがあり、それに基づいて認知症の薬が開発されています。

次回はそれぞれに分類されている薬の詳細についてまとめていきます。