認知症の症状 中核症状②

今回は認知症の中核症状のうち、記憶以外の障害である失語、失行、失認、遂行機能障害についてまとめていきます。

失語

認知症で見られる失語には、健忘性失語、超皮質性感覚性失語、運動性失語、語義失語があります。それぞれの特徴は以下のようになります。

健忘性失語

喚語障害(言いたい言葉が出ないことで語想起障害ともいいます)がありますが、言葉は流暢で言語の理解は良好な状態です。

超皮質性感覚性失語

会話は流暢ですが、他人が話した語句を繰り返す反響言語が特徴で、言語の理解が障害されています。

運動性失語

発話量が減少し、非流暢な会話です。他に構音の障害(発音が正しくできないこと)があります。言語の理解は保たれます。

語義失語

語の意味が理解できない状態で、超皮質性感覚性失語に似ています。

アルツハイマー病では健忘性失語を、前頭側頭葉変性症の症状の1つである進行性非流暢性失語では運動性失語、意味性認知症では語義失語、ピック病を含む前頭側頭型認知症では超皮質性感覚性失語を呈します。

失行

失行は麻痺がないのに日常の習熟動作が出来なくなる障害で、前頭葉が障害される認知症でみられます。構成失行、着衣失行、肢筋運動失行、観念運動性失行、観念性失行に分類されます。

構成失行

空間的形態処理の障害です。立方体の模写や、積み木の組み立ての障害がみられます。

着衣失行

衣服が着られないことです。

肢筋運動失行

ボタンをとめたり、靴下を履くという動作がぎこちなくなります。

観念運動性失行

命令による行動や真似が出来なくなります。自発動作は問題ありません。

観念性失行

物の名前や使い方が説明できるのに、実際に使うことが出来なくなります。

アルツハイマー病では構成失行や着衣失行を、大脳皮質基底核変性症では肢筋運動失行、観念運動性失行、観念性失行を呈します。

失認

失認とは感覚機能に異常がないのに物を認知できない障害です。視覚性失認、視覚性認知障害、地誌性失見当識に分類されます。

視覚性失認

視力や視野が保たれているのに視覚的に提示された物がわからなくなります。

視覚性認知障害

物体の大きさや形の同定が出来なくなります。

地誌性失見当識

熟知しているはずの場所や風景がわからなくなったり(これを街並失認といいます)、道順を説明できなかったり地図が書けなくなったりします(これを道順障害といいます)。

アルツハイマー病では進行性の視覚性失認や地誌性失見当識を、レビー小体型認知症では視覚性認知障害を呈します。

遂行機能

遂行機能は前頭葉の機能であり、計画を立てて実際に行動を行う能力のことです。主なものに思考の柔軟性、抽象的思考などがあります。
血管性認知症、前頭側頭型認知症では発病早期の段階で障害されることがあります。