『糖尿病の合併症① 網膜症』で書いたように、糖尿病で高血糖状態が続くと、体内の微小な血管が次第に障害を受けていき、様々な部位で合併症が現れます。糖尿病の合併症には糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性末梢神経障害があります。
今回はこれらの糖尿病の合併症のうち、糖尿病性腎症についてまとめていきます。
腎臓の働きと腎症の発生機序
腎臓は血液中に含まれる老廃物をろ過して、尿と一緒に排泄する機能を持つ、生命を維持する上でなくてはならないとても重要な臓器です。
腎臓は体の左右に1つずつあり、糸球体という微小血管の塊が多数集まった組織です。健常人の腎臓は、タンパク質などはろ過せずに、水、電解質、老廃物のみを通過させて尿のもとを作ります。
糖尿病で高血糖状態が続くと糖尿病性腎症になります。糖尿病性腎症では、糸球体の血管が障害を受けて糸球体のろ過能力が低下したり、血管が狭くなっていきます。
糸球体のろ過能力が低下すると、タンパク質が尿中に出てきてしまうタンパク尿がみられます。また、糸球体の血管が狭くなると、尿が出にくくなってきて、最終的には老廃物が体内に溜まって尿毒症になります。尿毒症になると、人工透析をしないと生きていけません。
症状と予防方法
腎症の自覚症状にはむくみなどがあり、検査値では尿タンパクが陽性になります。しかし、この時点では腎症がかなり進行している可能性があります。そのため、いかに早い段階で腎症を発見するかがとても重要です。
また、糖尿病の他に、高血圧、脂質異常症、肥満、腎臓に負担がかかる食習慣(高タンパク質食、食塩過多)があると糖尿病性腎症の進行が加速するので、これらの改善も必要になります。
腎症の検査
腎症の検査には、尿タンパクやeGFRという指標が用いられます。
尿タンパク
腎症が進行するにつれて、尿中に漏れ出るタンパク質(アルブミン)が増えます。前に書いたように、尿中にタンパク質が検出される段階ではかなり腎症が進行しています。そのため、微量のアルブミンを尿中から検出する検査をして早期発見に努めます。
eGFR
eGFRは体内の老廃物の1つであるクレアチニンの血液中の濃度から、腎機能低下の具合をみる指標で、推算糸球体ろ過量といわれます。
腎機能が低下すると血液中のクレアチニン濃度が高くなります。この血中クレアチニン濃度を年齢や体重、性別で調整してeGFRの値を出します。