糖尿病の合併症③ 末梢神経障害

『糖尿病の合併症① 網膜症』『糖尿病の合併症② 腎症』で書いたように、糖尿病で高血糖状態が続くと、様々な部位で合併症が現れるようになります。糖尿病の合併症には糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性末梢神経障害があります。

今回はこれらの糖尿病の合併症のうち、糖尿病性末梢神経障害についてまとめていきます。

発生機序

糖尿病で高血糖状態が続くと、末梢神経細胞の中にソルビトールという物質が蓄積して、神経細胞が障害を受けるようになります。

また、高血糖状態で末梢の細い血管に酸素や栄養が行き渡らなくなることでも神経細胞が障害を受けます。

主な症状

抹消神経障害は、様々な部位で様々な症状が現れます。
初期では、手足の末端の痛みやしびれ足の裏に薄い紙が貼りついたような感覚が現れて、次第に体の中心の方へ広がっていきます。
高血糖は自律神経にも障害を与えます。自律神経が障害を受けると、下痢便秘不整脈発汗異常、尿意を感じることができない無緊張膀胱起立性低血圧などが自覚症状として現れます。

末端神経障害や自律神経障害が進行すると、壊疽無痛性心筋虚血うつ症状無自覚性低血糖などがみられたりします。

壊疽については、神経の麻痺により痛みを感じることができず、気づかない間にケガが悪化します。その結果、潰瘍や壊疽を招いてしまいます。壊疽は特に足に起こりやすく、場合によっては壊疽部分の切断が必要になります。

無痛性心筋虚血は、心臓の神経が障害されてしまい、通常感じることができるはずの心筋梗塞や狭心症の痛みを感じることができなくなることで、治療が遅れて死に至る場合があります。

うつ症状は、神経障害の痛みが原因となり不眠になったり気分が沈んだりして招かれます。

無自覚性低血糖は、低血糖になった時に冷や汗、動悸、震えなどの自覚症状を感じることができなくなる状態のことで、気づかないうちに低血糖が進行して突然意識がなくなる可能性があるためとても危険です。

その他に、味覚障害が起こることもあります。味覚障害があると濃い味を求めるようになるため、糖尿病や糖尿病以外の生活習慣病が悪化する可能性があります。

治療法

糖尿病性末梢神経障害の改善するためには、血糖コントロールを適切に行うことが大切です。その他に、ソルビトールが神経細胞に蓄積しないようにするアルドース還元酵素阻害薬血液の循環を良くする薬鎮痛薬などを使用したりします。