認知症は「慢性、あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能の障害からなる症候群」と定義されています。そんな認知症の症状には、大きく分けて中核症状と周辺症状があります。
中核症状とは、認知機能障害のことを表していて、主な症状として記憶障害、記憶以外の障害として失語、失行、失認、遂行機能障害があります。
今回はこの中核症状の中の記憶障害についてまとめていきます。
まず、記憶の種類と分類についてみてみます。記憶は貯蔵時間による分類、記憶内容による分類、言語性と非言語性による分類に分けられます。
貯蔵時間による分類
貯蔵時間による分類では即時記憶、近時記憶、遠隔記憶に分類されます。アルツハイマー病にかかると病気の早期段階で近時記憶が障害されていき、病気の進行に伴って即時記憶や遠隔記憶が障害されていきます。
即時記憶
情報が入力された後にそれを1分間保持する能力です。正常では、7桁位の数字を記憶できるとされます。
近時記憶
情報が入力された後にそれを3〜4分保持する能力です。検査では3つの単語を使用して記憶能力を検査します。
遠隔記憶
発病する前の健康時に学習された個人の家族構成や生活史、歴史的事件の再生能力です。
記憶内容の分類
記憶内容の分類では陳述記憶、手続き記憶に分類されます。
陳述記憶
学習によって獲得された事実や知識に関する記憶で、頭で覚える記憶のことです。
陳述記憶は更にエピソード記憶と意味記憶に分類されます。前頭側頭葉変性症という病気の症状の1つである意味性認知症では意味記憶が障害されますが、それ以外の認知症ではエピソード記憶が障害されます。
エピソード記憶
学歴や職業歴、結婚など個人の生活史や、自分が体験した出来事など特定の場面が結びつく記憶です。
意味記憶
日常生活に必要な世間一般の知識の記憶のことで、社会生活の中で繰り返し行われ記憶されるものです。
手続き記憶
技能のような操作に関する記憶で無意識のうちに自然に記憶されるものです。自転車、楽器、スポーツなどがこれに該当します。
言語性と非言語性による分類
言語性と非言語性による分類では、文字通り言語性の記憶と非言語性の記憶に分類されます。