骨粗鬆症の治療薬には注射薬がいくつかあります。
カルシトニン製剤
作用機序
破骨細胞や前破骨細胞にはカルシトニン受容体があり、カルシトニンがここに結合するとこれらの細胞の働きが抑制されて骨吸収が抑制されます。また、腎臓に作用してカルシウムが尿中に排泄されるのを抑制し、ビタミンDの活性化を促進して生体内のカルシウムバランスを整えます。更に、神経細胞に作用して痛みを抑える作用もあります。このことから、早期の疼痛緩和目的や骨粗鬆症による骨折直後などに第1選択薬として使われる薬です。
分類される薬
カルシトニン製剤には、エルシトニン注があります。エルシトニン注にはエルシトニン注10単位、エルシトニン注20S、エルシトニン注20Sディスポ、エルシトニン注40単位があり、10単位、20S、20Sディスポは骨粗鬆症における疼痛に適応がありますが、40単位には骨粗鬆症における疼痛に適応はなく、高カルシウム血症と骨ページェット病に適応があります。
本剤成分に対して過敏症の既往歴がある人は禁忌になります。ちなみに、40単位に関しては妊娠末期の人も禁忌になります。
副作用
重大な副作用に喘息発作とテタニーがあります。テタニーは血中のカルシウム濃度が低下すると起こり、症状のしては手や口から始まり全身に広がっていくしびれ、全身の筋肉の痙攣や痛み、不安や興奮といった情緒不安定、体の表面を蟻が歩いているような感覚障害があります。テタニー症状が出たら、カルシウム剤を投与して血中のカルシウム濃度を上昇させる必要があります。
副甲状腺ホルモン製剤
作用機序
副甲状腺機能亢進症の様に、常に副甲状腺ホルモンが上昇すると骨密度は低下しますが、間欠的に上昇すると骨密度は上昇します。この骨密度上昇作用はかなり強く、骨密度の低下が強い骨粗鬆症や既に骨折している様な重篤な骨粗鬆症に対して使用されますが、他の骨粗鬆症治療薬よりも高額です。
禁忌患者
副甲状腺ホルモン製剤には多くの禁忌があります。
高カルシウム血症の人、骨肉腫発生のリスクが高い人(骨ページェット病の人、原因不明のアルカリフォスファターゼ高値の人、若年で骨端線が閉じていない人、過去に骨への影響が考えられる放射線治療を受けた人)、原発性の悪性骨腫瘍もしくは転移性骨腫瘍の人、副甲状腺機能亢進症といった骨粗鬆症以外の代謝性骨疾患の人、妊婦または妊娠している可能性のある人、授乳婦(フォルテオのみ) 、本剤成分またはテリパラチド酢酸塩に対して過敏症の既往歴がある人は禁忌なので服薬できません。
分類される薬
副甲状腺ホルモン薬にはフォルテオ皮下注キット600μg(一般名:テリパラチド)、テリボン皮下注用56.5μg(一般名:テリパラチド酢酸塩)があります。
フォルテオ皮下注キット600μg
フォルテオ皮下注キット600μgは、1日1回20μgを皮下注射します。フォルテオはラットへの長期投与によって骨肉腫が発生したというデータがあります。そのため、安全性の面から使用期間が24ヶ月に制限されています。もし中断してその後再開する場合には、合計の投与期間が24ヶ月を超えない様にしなければいけません。
テリボン皮下注用56.5μg
テリボン皮下注用56.5μgは、週1回56.5μgを皮下注射します。テリボンでも、フォルテオと同じ様にラットへの長期投与によって骨肉腫が発生したというデータがあります。使用期間が24ヶ月(104週)に制限されていて、中断してその後再開した場合は合計の投与期間が24ヶ月(104週)を超えない様にしなければいけません。